2007/07/29

島の活性化策二題噺:家と道──日生諸島

2007.07.24
【岡山県】

 頭島(Map)


 兵庫県との県境に近い日生(ひなさ)港から旅客船で渡る群島で、その中でも頭(かしら)島が最も人口の多い島になります。
 周囲の島に比べれば比較的平坦ですが、それでも容赦のない坂道ですから展望台に立つころには、ゼイゼイの汗だくです。
 たぬき山展望台(3階建てくらいの建造物がある)に登ると、いい具合に風が吹いていて気持ちよかったのでしょう、20分くらい昼寝しちゃいました。
 砂浜ではしゃいでいた高校生くらいのグループの奇声が、山の上まで聞こえてくるほど静かな島です。
 そんな声や、鳥の声を子守唄に…… あぁ気持ちよかったー。そんな、もうおっさんやで!
 上の写真は頭島の東にある鴻(こう)島に並ぶ「巣箱」(住宅・別荘)群です(洋上に浮かぶのはカキの養殖棚)。
 すごいでしょ、ここも牛窓と同じでみんな急傾斜地に無理矢理建てられた住宅です(何考えているんだろう?)。
 船の島紹介のアナウンスにもありましたが、最も人口の多い頭島でもほとんどの人は、日生に働きに通っているそうです。
 街自体は大きくはありませんが、日生には造船関連(と思う)の工場もあり働き口はありそうですから、島から通うことも可能と思われます。
 あの巣箱には住みたくありませんが、船で職場に通うっていいかも! とも思います(船が欠航したらもちろん休み!)。
 あなたも、瀬戸内海のオーシャンビューの邸宅から水上タクシーでの通勤・お買い物の生活はいかがですか? 生活のゆとりの質が変わります。
 それは確かかも知れません……


 鹿久居島(Map)


 頭島と鹿久居(かくい)島をつなぐ鹿久居大橋です。
 軽トラックが走れる程度の道しかない頭島と、人家のほとんど無い山ばかりの鹿久居島の間に橋を架けてどうするの? と思いますが、確かに鹿久居島の反対側と陸地はわずかな距離なので比較的容易に橋を架けられるように思えます。その準備でしょうか、鹿久居島では道路建設が進んでいます。
 さて、最も人口の多い頭島の人口はどれくらいでしょうか?
 2004年版SHIMADAS(日本島のガイド)によれば468人だそうです。
 いくら離島振興策でも、それじゃ予算を捻出できないだろう? と思いますが、きっと自治体の皮算用にはあの「巣箱」をたくさん誘致することが含まれているのではないでしょうか?
 そんなことを地域活性化策と受け入れていいのだろうか? もう少し考えて、その先につながるアイディアを焦らずに考えるべきなのではないか、とも思わされました。


 大多府島(Map)


 日生諸島の最も南に位置し、その南側は(距離はあるが)小豆島。最も平坦な島で「このくらいだと助かるわ」が実感です。
 そんな最も航路に近い場所柄なのか、陸地から最も遠いおかげなのか、江戸時代に縁のあるものが残されています。
 写真の六角井戸や、石積みの堤防が残されており、燈籠堂も再建されています。どこも、もう少し見せ方に工夫をすればいいのにと、ちょっと残念という印象もあります。
 とは言え、集落の中は家の軒先の道しかなくて、横を向けば家の中をのぞいているように見えてしまう状況ですから、工夫するにも気を遣う必要があるので、ちっと難しそうです。
 でも、そんな光景に心動かされる人は多いと思います。
 下の写真は、台風で流されたカキ棚の残骸のようですが、放っておいても大丈夫な島のようです。
 ここは少し荒れてますが海水浴場とされている浜です。
 そんな浜には誰も来ない? どうあがいても、この島には橋は架からない?
 だから、何か考えようよ、と思うのですが……

変化した町、変わらない島──前島、牛窓、長島

2007.07.23
【岡山県】

 前島(Map)


 牛窓(うしまど)港の目の前に浮かぶ小島です。
 夏休みということもあり、子どもたちの集団をいくつも目にしました。結構急傾斜の山道が多い島なのですが、そんな遊歩道を元気に歩き回っておりました。
 ビューポイントにはベンチが置かれてあったり、キャンプ場も整備されていたりと受け入れ準備は整っており、そこにイベント(歩こう会的なものと思う)を企画してその参加者が多かったようで、まんまと成功したのでは? そんな印象です。
 でも、上の写真のように(沖縄じゃありません)自分たちで演出できる部分へのセンスの良さが感じられ、好感度の高い島です。



 牛窓(Map)


 ここは日本です。とてもしゃれた風景を切り取れる町になっていました(奧が前島)。
 二十数年前にこの地を訪れたときの夏の印象は、狭い町と山盛りのシャコ(美味しいけれどそうたくさん食べられるモノではない)。そして、クソ暑い上に旅館のクーラーが有料のコイン式で、我慢比べの果てに根負けした者がお金を入れるという劣悪な印象しかなく、夏の瀬戸内海には来るもんじゃないというものでした。
 その点、今回ラッキーだったのは、暑いけれどもとてもドライな暑さで、前回のようなどんよりと空気がよどんで暑さからの逃げ場がない、という状況では無かったということです。覚悟していたけれど、これは助かりました……
 狭かった町も、かなりの面積を埋め立てたようで、写真のようなホテルや結構大きなヨットハーバーなどができていて、沖にはヨットが浮かんでおり、変わるもんだなぁと感心して眺めておりました。
 後ほどの日生諸島編に出てきますが、海に面した急傾斜地に無理矢理地中海風オーシャンビューの別荘だか住宅だかを建てるのが流行のようで、それがまた売れているようです。でも、あんな急傾斜地に作った物件を認めていいのだろうか、と思ってしまいます。
 不動産屋は建てて売ればいいわけですが、地震で被害を被るのは買った人だろうに……


 長島(Map)


 右手に見えるのが長島大橋で、その左が長島になります(舟を撮りたかった訳ではない)。
 その間の水路(海)が、三途の川よりもつらく人を隔てたと思える境界だったのですが、現在でもその性格は変わってないようです。
 長島には、国立ハンセン病療養所が2つあります。
 特別な他意はなく、どんな場所なのか見ておきたいという関心からの行動です。以前に、沖縄の屋我地島(やがち)の療養所に迷い込んだことがあり、拒絶されるものではないとの経験も働いたと思います。
 しかしこの長島には、長島大橋を渡ったところにゲートがありそこで質問したところ「療養所に用事のない者は断っている」とのこと。「入ることも許されないのか?」に「万が一事故が起きると困る」と言われ引き下がることにしたのですが、その門番は「らい病の施設があるんですよ」の言葉を語っていました。
 調べてみれば、禁止された言葉ではなく「差別的な例として使用を避けるようにしている」とあるので、威嚇的にわざと使ったのかも知れませんが、そんなことに気を遣いながらも現実を見ておきたいと考える者にとっては、国が差別を容認しているように受け止められたことに、とてもショックを受けました。
 わたしは、これが現実と受け入れるしかありません。

島は売り物?──直島、豊島

2007.07.22
【岡山県】

 直島(Map)

 集落の中を若者の集団や外人たちが歩き回っています。そんな物好きは自分くらいかと思っていたらこの島は違います。奇妙な小島です。
 美術プロジェクト作品が散在しているだけでは、アートな島とは言えないと思いますが、「著名な」と冠のつく芸術家の力が働いているのでしょうか(安藤忠雄さんの建築物には感銘を受けたことがあります)。
 そんな宣伝の力なのか、観光バスがフェリーに乗ってやってくるのには驚かされました。昨今瀬戸内には大きな橋が次々と架けられ、観光バスがフェリーに乗って訪れる島は小豆島くらいかと思っていましたが、ベネッセ恐るべしです。
 だからと言って、いきなりこんな写真見せられてもワケ分からないですよね。
 主催者言うところの、家プロジェクト「南寺」という作品です。中はギャラリーだそうですが、要予約とか書いてあったので入りませんでした。


 とは言え、そんな作品が散在するのもこの本村地区だけで、あとはベネッセハウス(宿泊施設、美術館)があるだけのことです。その施設の入り口にも門番が立っていて、敷居が高そうな印象を受けそそくさと引き返してきました。
 これらの施設は「誰のためにあるの?」という疑問を持ちました。客寄せのために自治体が誘致したのだと思いますが、それで島のためになっているのだろうか? と強く感じました。
 そりゃ、数軒はアイスクリームなどのお店を出していても、島をあげてのプロジェクトとは感じられないことに違和感を覚えたからです。
 始まったばかりで、これから浸透させていく考えなのかも知れませんが、ちょっと役所の「税収アッププロジェクト」が先行しすぎている印象があります。島民の方はどう感じてらっしゃるのでしょうか? それが重要な問題なのでは、と思いました。


 宇野からフェリーで渡るときに大きな煙突が見えますが、現三菱マテリアルの銅の精錬工場として作られた施設だそうです。
 現在では、豊島の産業廃棄物処理施設を併設して好感度のアップに努めているようです。
 下の写真は、宇野から豊島へ向かうフェリーから見える光景なのですが(直島への観光客の多くは目にしない光景)、何だか秘密工場のように見えました。
 ──本当に、瀬戸内海には表からは無人島かと思われても、岬をかわした瞬間に異様な光景が広がる島が散在しています。便利な場所だから仕方ない面は理解出来るのですが、対峙(たいじ)する度にギョッとさせられます。
 自治体は「そのおかげで発展してきた」と言いますが、外から見ると「島を売り物にしているのでは?」と感じてしまいます。
 「そのおかげで、暮らしやすいんだ」など、住民が恩恵を受けているのであれば外から文句をいうものではないのですが……




2007.07.23
 豊島(Map)


 結構前になると思いますが、「ニュースステーション」で久米宏がさかんにアピールしていた、産業廃棄物の不法投棄が問題になっていた豊島(てしま)の現場です。フェリーからも、トラックやショベルカーの動きは見え、まだまだ作業は続いているようです。
 上陸後、行けるところまで近づいてみましたが、現場手前の岬を隔てた場所にある海水浴場は閉鎖されていました。
 そのもう一つ岬をかわしたところに、下の写真のリゾート的な施設がありちょっと驚きました。
 産廃の不法投棄は迷惑ではあっても、この自治体(小豆島の土庄町)は結構潤っているんじゃないか、という印象を受けました。


 ここでも「島を売り物にしても構わない」と考えているのではないか、と感じてしまいます。
 過疎化・高齢化が進み、発展の可能性を見捨ててしまった自治体の姿勢が、産廃問題を止められなかった原因の一因なのではないか、との印象もあります(何も分かってない、と言われるかも知れません)。
 老人ばかりの税収のない島で(ここでもお金の話しになってしまうのでしょう)、島民の意志を受け入れることはしょせん無理な話である、と自治体に言われてしまえば他に話しの持って行き先はありません。でも、どうしたらいいのでしょうか? これも、地域格差問題に含まれると思います。
 下の写真は王子ヶ浜海水浴場ですが、島民の人たちは昔から親しんできた当たり前にきれいな海岸のそばで暮らしたい、と思っているのではないでしょうか……

教科書の内容を検証したかった──児島湾干拓地

2007.07.22
【岡山県】

 児島湾干拓地(Map)

 前回の岡山紀行の帰り道では時間が無かったので、今回は時間を取らねばと寄ることができました(通り道のついでですが)。
 小学校(?)で教わったと思うのですが「児島湾干拓地」を覚えているでしょうか?
 わたしは、日本は何かとてもすごいことをやっているんだと(八郎潟と共に)、誇らしげに感じていた記憶があります。
 でも近ごろでは、休耕田が増える中で決行された諫早湾の埋め立てを目にして、果たして児島湾や八郎潟は現在でも機能しているのだろうか? ということをこの目で見てみたい気持ちが強くなっていました(下の写真は締め切り堤防上の道路で、背面側にはいわゆるギロチンの水門があります)。


 現在の児島湾の埋め立て地には、稲の緑が一面にどこまでも広がっており、人の手で見事に管理されている田園の光景に圧倒されました。
 ここは人の手で作ったのですから、ある意味理想的な農村の姿を目指していると思われます。
 地区の真ん中に伸びるメインストリートを挟んで民家が並んでいます。その両側には果てしなく広がる水田と、おそらくポンプ等できちんと管理されている灌漑用水路が伸びています。
 現在まで、ここにいくらのお金が掛かって、どれだけの収穫が得られているかの収支についてや、住民の方々の満足度についての知識はありませんが、少なくとも成功例として挙げられるだけの環境整備であることには違いないと感じました。
 でも、そこで生産されるお米についての認知度は決して高くないと思います(コシヒカリなど比較の対象がよくないのか?)。
 国策で始まった事業なので、年貢が高いとか勝手なことは出来ないなどの制限があるのでしょうか(知らないだけなのか?)。
 時代が変わってニーズも変わりましたが、おいしいと思うお米をやりがいを感じながら作ってもらえる環境であって欲しいと思います。
 でもやはりここは、政府の宣伝として教科書に載せられていたと思えてしかたありません。子どものころにすり込まれたことへの反動だろうか……